レンズ沼、という言葉をご存知でしょうか。読んで字のごとく、ズブズブとレンズを求める現象を指します。
沼に思いを馳せながら、おすすめの一本をご紹介します。
まず、レンズ沼にハマるとはどういう状態を指すのでしょう。
私が考える現象のひとつに『同じ焦点距離のレンズを集め始める』があります。
(すでに沼の住人である方は深く頷いていることでしょう)
そう、ついつい「このレンズは今持ってるのとはここがこう違うから、だから手に入れなくちゃいけないんだ」と自分への言い訳のような、説得のような、洗脳のような、そんな調子の言葉を繰り返しながらレンズを手に取り、レジに向かうわけです。おかしいですよね、50mmのレンズなんてもう3本も4本も持ってるのに……
ではそもそものハマる前にどんなきっかけがあるのか?を考えると、まず最初のフェーズとして『認知』があると言えます。
つまりレンズ沼という存在があると知る、あるいは他にどんなレンズがあるか興味を持つきっかけがあるわけです。
前者は主に、周囲の先人から知ることになるでしょう。お、君もカメラを買ったのかい?レンズは何持ってるの?2本かー。じゃあ沼にはまるのはこれからだね……という調子で。
後者は単純に写真を撮り始めて日が経つと自然発生的に思いが湧き上がるんじゃないかと思います。標準ズームと単焦点は持っている。でも最近物足りない。雑誌を読むと他にも面白そうなレンズがある。まずは広角やマクロなど足りない焦点距離を埋めてゆき、埋まったあとは……
知ってしまった後はどうなるか?それはもう、買うか買わないか、前へ進むか後ろへ戻るからの2択になるでしょう。
重度になると、ただのレンズ沼がオールドレンズ沼へと進化し、病状もますます悪化です。
さて沼に入る記念を一本を何にするか?ですがこれは十人十色、千差万別です。
ある人は手に入りやすい低価格のオールドレンズを推すでしょうし、ある人は性能の良い現代的なレンズを推すでしょう。はたまた、クセの強いレンズで新しい表現を、と推す人もいるでしょう。
今回ご紹介するのは、現代的な写りをしながらもクセがある、そんな二面性を味として楽しめるレンズ、Voigtlander NOKTON 58mm F1.4 SL II です。
Voigtlander NOKTON 58mm F1.4 SL II はコシナ製のマニュアルフォーカスレンズです。マウントはNikon Fマウント。Ai-Sなので、ニコンのボディであればボディ側で絞りのコントロールが可能です。非対応のフィルムカメラやマウントアダプターを介して使えるのも嬉しいポイントですね。コシナの製品ページでは
設計に無理のない大口径標準レンズとして伝統的に採用されてきた58mmレンズを現代の技術で新たに設計。クラシックレンズの味わいと現代的な性能を両立させています。APS-Cサイズでは85mm相当のポートレイトレンズとしても活躍します。絞り開放では柔らかな描写を堪能でき、絞るに従いシャープな結像をする特性を活かした撮影が楽しめます。
と紹介されています。
先ほどこのレンズには二面性があると書きました。コシナ自身も、絞り開放と絞った状態で描写が異なると書いてありますが、どのくらい変わるのでしょうか?実際に何枚か見てみましょう。
まずは開放値で撮影した写真です。
どうでしょう。このボケ味っぷり。F1.4という極薄のピントもさることながら、全体的にソフトフォーカスのような”もや”がうっすらとかかっているのが見えます。
しかしピントを合わせたところを見ると、しっかりとピントが立っていることがお分かりになるでしょうか。
このように、NOKTON 58mm F1.4は主題をハッキリ見せながらも幻想的な雰囲気を醸し出すことが可能なのです。
では絞った状態ではどう写るでしょうか。
F4まで絞ってみましたが、とても同じレンズで撮ったようには見えません。カッチリ解像しています。
一段絞ればソフトフォーカス効果は無くなり、もう一段絞ればパープルフリンジもかなり軽減され、現代レンズであることを思い出させてくれる解像をしてくれます。
これがNOKTON 58mm F1.4の持つ二面性、味です。この2枚を見比べてみただけでも、おおっ と思われるのではないでしょうか。
ここから先は、味以外に私がNOKTON 58mm F1.4を使って感じる魅力を簡単にご紹介します。
造りが良い
改めて書くまでもありませんが、製造元のコシナが作るレンズはどれもクオリティが高く、金属の加工精度やピントリングのトルク感、絞り環のクリック感、どれを取っても最高レベルです。
レンズを愛で、使わないときでさえ所有欲を満たしてくれる……レンズ沼にはそのような楽しみ方もあるのです。
焦点距離が58mmである
今ではすっかり珍しい58mmという焦点距離はマニア心をくすぐるのみならず、スナップ撮影などで絶妙な距離感を創り出してくれます。
個人的に広角より望遠が好きなので、60mmくらいが標準域として使いやすく感じます。
色のりとコントラストの良さ
これも現代的なレンズこそと言えるかもしれません。
ノーレタッチでこの色のり、コントラスト。うっとりとしませんか。
そこそこ寄れて撮れる
この焦点距離では珍しいことではありませんが、45cmという最短撮影距離はここぞという時にも活躍してくれます。
開放で撮ることで威力倍増、といったところでしょうか。
そこそこ安い
さすがに撒き餌レンズやオールドレンズのそれとは比べられませんが、現代のレンズとしてはかなりお手頃な価格となっており、沼への第一歩を踏みやすくなっております。
中古で探すのもよいですが、新品でお買い求めの際はフジヤカメラさんがおすすめです。
いかがだったでしょうか。レンズ沼にハマるきっかけのレンズは様々ありますが、NOKTON 58mm F1.4、候補リストの1本に含めてもよいレンズだと思いませんか?
そもそも沼に入る気はない、とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、使っていてとても楽しいレンズです。マウントアダプターを使えば、全てではありませんが各種マウントにも対応可ですよ。ぜひ、ご検討してみてください。
今回の機材
レンズを愛で、楽しむなら、やはりα7 IIが適任です。
最近リニューアルしたNokton 58mm F1.4 SL II。よりクラシカルになりました。写りは変わらずです。