いよいよ iPhone 7 / 7 Plus が発売されましたね。写真・カメラ好きにとって気になるのはやはり 7 Plus。買おうかどうか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さっそく iPhone 7 Plus を購入したので、カメラ機能に迫ってみました。
撮影の幅が広がる望遠レンズ
7 Plus では従来の広角レンズ(35mm換算 約28mm相当)に加えて望遠レンズ(35mm換算 約56mm相当)が搭載されました。
これが思った以上に撮影の幅が広がって楽しいです。望遠と言いつつも実際は標準域に近い焦点距離なため、街中スナップが捗ります。室内や風景の撮影には広角が役立ちますが、スナップだと余計なものが写り込んでなかなかうまく被写体にフォーカスできずデジタルズームで対応していたので、正直この望遠レンズだけでも 7 Plus を買った価値はあったな、と思います。
デジタルズームではないので解像もさすが。ちゃんとしています。感覚的には広角側とほぼ同等。
レンズスペックは明るさ F2.8・手ぶれ補正なしとなっているため、ブレを抑えるために日中でもしっかり構えるかバーストモードで撮影するのが安全です。
ここから更に外部レンズを装着すれば100mmくらいの焦点距離になってくれて嬉しいのですが、2倍の外部レンズってあまりないんですよねぇ。
ポートレードモードはこれからに期待
さてさて10月下旬頃アップデートで追加予定とアナウンスされていた被写界深度エフェクト(ポートレートモード)ですが、Public Beta 10.1 で追加されたので試してみました。
いかがでしょう。デジタル一眼で撮影したと言っても意外と信じられるクオリティと言えるのではないでしょうか。
なおポートレートモードで撮影するにはいくつか条件があり
- 被写体との距離が 240cm 以内であること
- 被写体との距離が約30cm 以上であること
- 光量が十分にあること
の3つを満たす必要があります。ちなみに撮影は望遠側のレンズで行われます。
上の写真だと提灯が最短、お祭りが最長くらいの距離です。見比べればわかるように、被写体との距離が短いほどボケは大きくなります。
ただ、ポートレートモードには後述する弱点があり、必ずしも『ボケのある写真が撮れるから iPhone 7 Plus を買おう』とはならないので注意が必要です。
ポートレートモードの弱点
まだβ版ではありますが、ポートレートモードを使用して気になったことが4点あります。
境界の処理がうまくできない
例えばこの写真。針葉樹の細かい葉の後ろもうまくボケているように見えますが、実際には
このように処理が甘い状態となっています。いくつか撮影を試してみてわかったのは
- 被写体自体が細かくて密集しているもの
- 背景の被写体が細かくて密集しているもの
のいずれかだとこの状態になりやすいようです。
前ボケが生成されない
個人的にはこれがとても惜しい。そう思わされる弱点です。
そうです、残念ながらβ版においてポートレートモードで前ボケは生まれません。
こちらは画面中心ほどのチェーンにフォーカスを当てて撮影したものですが、手前のチェーンにはボケが発生していません。つまり、ポートレートモードでは合焦している部分よりも手前はそのままボケずに写るということです。
てっきり前ボケは生成されると思っていたのでこの仕様は残念でした😢
ここから先は予測ですが、合焦した部分を境に前後で別々のレンズを使っているため、手前側のレンズはボケ処理ができない(合焦した部分までボケてしまう)という具合なのではないかと思いました。これを解決するためにはライトフィールドカメラのように複眼レンズを使う必要が出てきそうです。
テーブルフォトには不向き
上述したようにポートレートモードで撮るには被写体から最低 30cm 以上離れないといけません。
で、一般的なテーブルと椅子の組み合わせで食事をした場合、30cm ってテーブル上の被写体を撮るには iPhone 7 Plus を顔の直前ギリギリまで持ってこないと難しいのですよね。
通常のカメラ撮影ならもっと近づけるのですが、ボケをテーブルフォトで活かそうとすると、ちょっと体勢がきつくなります😂
連射ができない
ポートレードモードは撮影条件が揃わない限りはちゃんとした撮影ができません(シャッターは押せます)。手ぶれ補正も使えないためじっくり構えて取る必要があり、連射(バーストモード)もできないようになっています。
加えて言うと動き物に反映させるのもかなり難しいため、名前どおりポートレードなどの静物撮影が今のところは機能対象と言えるでしょう。
思った以上に使えるRAW現像
最後にご紹介するのがRAWデータの現像。この仕様は iOS 10 によって追加されたので、厳密には 7 Plus 特有の機能ではなく、6s 以降であれば使用できます。
RAW撮影をするには対応するアプリ経由で撮影するため、Lightroom mobile や RAW by 500px のインストールが必要です。
RAWデータのサイズは1枚あたり約10数〜20MBほど。通常のJPEGだと1枚あたり2〜4MBくらいなので数倍〜10倍くらいのサイズ量ですね。
実際に現像を試してみました。
元になったのはこの写真。同じ構図で通常のカメラ撮影と、LR mobile で撮影をした後、暗部を持ち上げる処理を LR mobile でそれぞれに同じ値だけ設定しました。それでは結果を見てみましょう。
こちらが通常のカメラで撮影したものに処理を施したもの。
こちらがRAWデータを現像したもの。比較しやすいように一部分を切り抜いてみました。
撮って出しはディテールが潰れていたり輪郭が不自然に強調されていますが、RAW現像したほうは自然な状態であることが見てとれます。
スマートフォンサイズのセンサーなので質にはもちろん限界がありますが、これくらい耐えられるのであれば今までよりも表現の幅が広がることは間違いないでしょう。
7 Plus は買いなのか?
以上、軽くではありましたがレポートでした。
7 Plus はカメラ好き・写真好きにとって買いなのか?と言われると、全ての人におすすめできる機種ではないな、というのが現状の印象です。ポートレードモードはまだまだ使用条件が限定的ですし、RAW撮影なら1世代前のモデルでもできます。
手軽にボケのある写真が撮れるといってもちゃんとしたカメラには及びませんし、7 Plus を購入するお金でデジタル一眼のエントリーモデルと単焦点を購入するほうが写真を撮るのは楽しめるんじゃないかなあ?と。
ポートレードなど静物撮影で気軽にボケた写真を撮りたい、というシチュエーション以外で考えると、面白いが魅力的とまでは言い切れません。
とは言え、現状がβ版であることや、アップデート(するのか?)で今後性能が向上するだろうと考えると、まだこれからだよね、とも思います。なんだかんだ iPhone で撮る手軽さはデジタル一眼にはない大きな魅力ですしね。
標準域の撮影環境が欲しかった(私ですね)とか、ポートレードモードは静物しか使う予定がない、多少取り扱いが難しくても構わない、という方にとっては写真を撮るのが楽しくなる、いい相棒になり得そうです。
ここから iPhone のカメラがどう進化していくのか、非常に楽しみです。